最強クラスの英雄として創作で登場するヘラクレス。fateでも最強のサーヴァントと強かったと思います。ですが、その生涯は悲運でありました。今回はヘラクレスをなるべくわかりやすく解説したいと思います。
生い立ち
ギリシア神話の最高神ゼウスと人間(ペルセウスの孫)との間に生まれたのがヘラクレスだ。ギガントマキア(巨人族との戦争)で人間の力が必要不可欠だったので、ゼウスは人間との間に子供を作ることにしたそうです。
しかし、その方法は果てして許されるのものでしょうか?
口説けなかったゼウスはどうして諦めきれなかったようで、相手の旦那と瓜二つに変身して、しかも一夜を三倍にして楽しんだそうです。なんでもありです。こうして孕ませることに成功したが、ややこしいことに母親は双子を身ごもってしまいました。ゼウスとの間の子と、本当の旦那との子供です。このことを利用したのがヘラです。
ゼウスの正妻であるヘラは不貞を働いたゼウスをよくは思っていませんでした。当たり前です。ヘラクレスが生まれる日にゼウスは「今日生まれた子は王様になる」と宣言しました。するとヘラは双子が生まれる順序を入れ換えるように策を労します。生まれるはずだったヘラクレスを無理矢理にでもお腹に止めたので、母は亡くなり、双子(エウリュステウスとヘラクレス)も生まれる順番が入れ替わりました。
また、ヘラの母乳には不死になる力があり、ゼウスは生後まもないヘラクレスに授乳させました。ヘラクレスの吸う力が強くヘラは痛みで飛び起きたとされています。激怒したヘラは赤子のヘラクレスに二匹の毒蛇を放ちますが、驚くことにヘラクレスは二匹の毒蛇を絞め殺してしまいました。
さすが、神の子。最強の英雄は赤子の頃から、逸話を残していたみたい。
十二の功業
神々によって多彩な武芸を身に付けたヘラクレスは、剛勇無双の戦士に成長しました。時々は師事した神に歯向かうこともありましたが、数々の武勇を認められて王の娘を妻として迎えました。三人の子宝に恵まれて、幸福に過ごします。しかし、そうそう上手くはいきません。またしてもヘラが憎悪を晒して、ヘラクレスに狂気を吹き込んだのです。正気を失ったヘラクレスは、自らの手で我が子を炎の海に投げ込んで殺してしまいました。妻はショックで自殺。正気を取り戻したヘラクレスは深く懺悔して、アポロンから罪をあがなうために神託を伺います。
「ミュケナイの王、エウリュステウスに従えて十二の功業を果たせ」
エウリュステウスとはヘラクレスの兄に当たる人物で、本来なら自分が王になるはずの国で、苦難の道を進むことになりました。
ネメアの獅子
この獅子は頑丈な毛皮を持っているので、刃物や矢が通りません。なのでヘラクレスは棍棒を使って獅子と戦い洞窟に追い詰めます。そして、入り口を大岩で塞ぐと三日間の格闘の末に素手で獅子を絞め殺しました。ヘラクレスは戦利品として獅子の皮で防具を作り、獅子の頭を兜にしました。
ヒュドラの退治
ヒュドラは泉に生息する九つの頭を持った水蛇で、触れるだけで死んでしまう猛毒を吐き、真ん中の頭に不死性を持った怪物です。ヘラクレスは口と鼻を布で覆って、鉄の鎌で戦うことにしました。しかし、ヒュドラの頭は落としても、切り口から首が生えてくるばかりか、不死性によって倒すことはできません。そこで従者のイオラオスが、切り口を松明の炎で焼くことでヒュドラの首の回復を妨げて、八つの頭を倒しました。不死性の頭は切り落としてから地面に埋めて、大きな岩の下敷きにすることで退治に成功しました。
実は、この戦いではヘラがヒュドラに大きな蟹を加勢させていますが、ヘラクレスは瞬殺しているそうです。
また、ヘラクレスはヒュドラーの猛毒を矢に塗って使うようになります。この判断が後に惨劇を生みます。
ケリュネイアの鹿
女神アルテミスはリュカイオンの山中で、黄金の角と青銅のひづめを持った五頭の鹿と遭遇しました。四頭は捕らえて自分の戦車に繋げますが、残りの一頭は狩猟の神であるアルテミスですら捕まえることができない俊足を誇っていました。エウリュステウスは二つの功業をあっさり成功させたヘラクレスに難行を与えるために、ケリュネイアの鹿を生け捕りにすることを指示します。ヘラクレスは一年間追い回して、鹿の生け捕りに成功。アルテミスに捧げました。
エリュマントスの猪
次の功業は、農村を荒らし回っていた人食いの大猪を生け捕りにすること。生け捕りは問題なく成功しましたが、ケンタウロス族と争いになってしまいました。ケンタウロス族の秘蔵酒を飲んでしまったことが原因です。ケンタウロス族にはかつての師匠であり、アキレウスなども育てたケイローンがいました。ヘラクレスは誤ってヒュドラの毒矢でケイローンを射貫いてします。不死性を持つケイローンは猛毒に激しく苦しみ、死ぬに死ねません。ついにはゼウスに頼ので、不死の力を取り除いてもらい死を選びました。
アブケイアスの牛小屋掃除
エリスの王アブケイアスは三千頭の牛を飼っていましたが、管理は行き届いていなかったようで、三十年間牛小屋の掃除をしていません。ヘラクレスは「一日で掃除が終わったら、牛の十分の一をもらう」と提案。アブケイアスは承諾しました。ヘラクレスは二つの川の流れを無理矢理変えて、牛小屋に溜まった汚物を一気に洗い流しました。ヘラクレスらしい豪快な掃除方法でしたが、二つの川は流れが狂い、たびたび洪水を引き起こすようになりました。
ステュムパリデスの鳥
その鳥はかつては軍神アレスのペットだった怪鳥です。翼、くちばし、爪、が青銅できていて、人を襲ったり、毒性の汚物を撒き散らして人々を苦しめていました。アテナとへパイトスから、巨大な青銅製の鳴子を鍛造してもらったヘラクレスは鳴子を使い、怪鳥が驚いて飛び出したところをヒュドラーの毒矢で射落としました。
十二の功業 後半
クレタ牡牛
美しい毛並みを持つ牡牛は、クレタ島の王ミノスを罰するためにポセイドンが用意したものだ。この牡牛に、ミノスの妻パーシパエが異常な恋に芽生えた。結果、二人の間にミノタウロスが生まれたとされる。そんなやり取りの後にヘラクレスは牡牛を捕らえるように命じられたので、ミノス王に協力を求めますが拒否されます。しかたなく、ヘラクレスは素手で格闘して牡牛を捕られました。
ディオメデスの人食い馬
トラキアの王ディオメダスはアレスの子で、旅人を捕られては自分の馬に食べさせていました。この話には二つの説があります。一つは、ディオメダスを馬に食わせて、馬は生け捕りにした。二つは、ヘラクレスが馬を奪ったことに激昂したディオメダス軍勢を率いて追ってきたので、少年に馬の番させました。ディオメダスを倒して帰ってくると、少年は馬に食い殺されていた。
アマゾンの女王の腰帯
アマゾンの女王との交渉は上手くいかないと判断したヘラクレスは有能な戦士を集めてアマゾンに乗り込みます。いざ交渉をするとアマゾンの女王ヒッポリュテは強靭肉体をもつヘラクレス達を気に入り、丈夫な子を作ることを条件に腰帯を渡すことを確約しました。しかし、またしてもヘラが邪魔をします。ヘラはアマゾネスに変装して「ヘラクレス達の真意は国取りだ」とアマゾン達をそそのかして、襲撃を企てました。ヘラクレスは激怒して、ヒッポリュテを殺して、腰帯を奪ってしまいました。
ゲリュオンの牛
ゲリュオンの牛は紅い毛並みが美しい牛で、西の果てのエリュテイア島しか生息しません。それは遥か遠くの島で、常人では辿り着くことはできない。アフリカとヨーロッパの国境にまでたどり着いたヘラクレスは山脈がなければ、早くたどり着けると考え、怪力で山脈を真っ二つにしまいました。この山脈は「ヘラクレスの柱」と呼ばれことになります。エリュテイア島に辿り着いたヘラクレスでしたが、牛は巨人と双頭の番犬オルトロスによって守られています。ヘラクレスは棍棒でオルトロスを殴り殺して、牛を生け捕りにしました。ヘラクレスの脳筋が強調される功業でした。
ヘスペリデスの黄金の林檎
黄金の林檎はゼウスとヘラが結婚するさいに大地の女神ガイアが贈ったもので、ヘラは林檎をヘスペリデスの娘達と、竜であるラードーンに守護させていました。とは言えヘラクレスはその場所を見つけることができません。そこで「ヘスペリデスの父親アトラスを探すよう」と助言を貰います。アトラスはゼウスによって「天球を支える」と言う、重い罰を受けていました。アトラスは「林檎を取ってくるから、その間天球を支えてくれないか」と提案します。数日後、アトラスは林檎を取ってきますが、天球を支えたくないアトラスは「俺が、エウリュテウス王に林檎を届けよう」と提案します。ヘラクレスは思案してから「天球を担ぐ位置を変えたいので、ちょっと持っていてくれ」と言います。アトラスは少しならと天球を受けとりますが、ヘラクレスは林檎を持って黙って立ち去ってしまいました。脳筋エピソードが続くヘラクレスの数少ない頭を使ったエピソードです。
地獄の番犬ケルベロス
ケルベロスは言わずとしれた三つの頭を持ったオルトロスの兄貴分です。ケルベロスを生け捕りにする為に、ヘラクレスは冥界に出向いた。冥界の王ハデスからケルベロスを傷つけなければ連れて帰ってもいいと承諾を得ます。ヘラクレスは剛力で、強引に連れて帰りました。エウリュステウスは自分が連れてこいと指示したのに、ケルベロスを前にして、かごの中に隠れてしまいました。
最期
十二の功業を成し遂げたヘラクレスは罪を許されて、その後も数々の逸話を残していきました。数年後にはディアネイラと再婚しました。とある日に、旅に出かけたヘラクレスとディアネイラは、河に差し掛かりました。河の渡し守であるケンタウロスのネッソスにディアネイラは担いでもらって、ヘラクレスは浅瀬を渡ることにしました。しかし、ディアネイラの美貌に心奪われたネッソスはディアネイラを連れ去ろうとしました。ヘラクレスはヒュドラの毒矢を使いネッソスを射殺します。ネッソスは悪あがきに「私の血を衣服に塗れば夫は浮気をしない」とディアネイラに言いました。
あくる日、遠征から帰ってきたヘラクレスは、捕虜に若い女を連れてきました。ディアネイラはヘラクレスの浮気を恐れ、隠し持っていたネッソスの血が染み込んだ衣服をヘラクレスに与えます。
途端に体が火照る。猛毒に犯されたヘラクレスは苦しさのあまりに「殺してくれ」と頼みますが、誰も彼を殺せません。最後には火をつけるように命じて、生きたまま焼かれました。これを憐れに思ったゼウスはヘラクレスを神とすることにしました。ここまでくると散々ヘラクレスを苦しめたヘラも、ヘラクレスを認め娘を妻に与えました。
まとめ
最後にはヘラに認められて良かったですが、どうしてヒュドラの毒矢を使い続けたのかわかりません。師匠も殺してるし。やはり根っからの脳筋なんですかね。