ケルト神話の半神半人の英雄、クーフーリンを解説します。
とんでもないイケメンだった?
美しい容姿だったと伝えられるクーフーリンは、しなやかな体躯に白い肌、輝く青い瞳、百本の宝石の糸で髪を縛るなど、派手な装飾で身を飾っていたとされます。もはやビジュアル系!
そんな容姿が災いして、女性に付きまとわれ、挙げ句の果てには命を狙われたりますが、その女性の命を助けたりと、女性に手をあげるようなことはしませんでした。
めっちゃ紳士なクーフーリンですが、戦闘となると一変します。戦意が高まり興奮が頂点に達すると、髪の毛が逆立って光を放ち、筋肉が膨れ上がる。骨は内部で回り、片目は小さくなり、片目は大きくなる、口から耳が裂けて…………とにかく化け物になります。普段の美しい容姿と戦場の怪物、二つの姿を持つ英雄こそがクーフーリンです。
名前の由来
クーフーリンと名乗るようになるエピソードがあります。子供の頃セタンタと名乗っていたクーフーリンは、王さまから鍛冶屋クランの宴会に招待されました。セタンタは遅れて行くと伝えますが、王さまは伝え忘れてしまい、館にクランの番犬が放たれてしまいます。このクランの番犬は、十人の戦士と同等に戦える好戦的な犬で、遅れて到着したセタンタは襲われてしまいました。しかし、セタンタは一人で応戦して絞め殺してしまいます。鍛冶屋のクランは自慢の番犬を失い嘆く。その様子からセタンタは次の番犬が見つかるまで、自分が番犬になることを名乗り出ます。王さまは「クランの番犬」と言う意味のクーフーリンの名をセタンタに与えました。
このことがきっかけでクーフーリンは、「犬の肉を食べない」と言うゲッシュを立てます。(ゲッシュとは、制約を持つことで神の祝福を得るが、破れば災いが降りかかる)
ゲイボルグの入手
成長したクーフーリンはフォルガルの娘エマに求婚するが断られます。クーフーリンの才覚を見切ったエマは立派な戦士になることを条件に出したのです。早速クーフーリンは影の国の女魔法戦士スカサハの弟子になり、武術と魔法の鍛練を積みます。その過程で修行仲間のフェルディアと親友になりました。ある日、師匠であるスカサハと同等の力を持った女戦士オルフェとの争いが始まります。スカサハは争いに参加させないようにと、クーフーリンに睡眠薬を飲ませますが、クーフーリンは一時間で目覚めてしまい、オルフェの六人の勇士を倒し、オルフェ自身も降参させますが、クーフーリンは条件としてオルフェに自分の子供を生むように言いました。
修行の終わりにただ一人ゲイボルグを預かったクーフーリンは帰国してエマと結婚しました。ツッコミどころがありますが、まあそんな感じです…………
壮絶な最期
クーリーの牛争いと呼ばれる七年に渡る戦争がはじまり、コナハトの女王メイブが侵攻してきます。このメイブはかなりのやり手だったようで、魔女の力を使いアルスターの戦士達を戦えない状態に追い込んでしまいました。魔女の力が通用しない半神半人であるクーフーリンはたった一人で戦うことになります。クーフーリンの武器、ゲイボルグは攻撃の特化した槍で、投げれば絶対敵に当たるだけではなく。(これだけでも十分強いんですが)高く投擲すれば30の矢じりが降り注ぎ、刺せば30の刺となって破裂する。その他にも、稲妻の速さ、どんな防具も突き刺す、無数に枝分かれ、攻撃力は最強クラスの槍なんです。
クーフーリンはたった一人で連戦連勝。憤然した女王メイブはあろうことか、スカサハの元で共に鍛練を積み、親友となったフェルディアを戦場に送りました。クーフーリンとフェルディアの戦いは四日間続き、最後にはゲイボルグでフェルディアを殺してしまいました。やむを得なかったとは言え、親友を殺してしまったことを深く悲しみ手厚く葬ったとされます。
その後コンラと言う子供がクーフーリンを訪ねてきます。コンラはオルフェの息子。ずばりクーフーリンの息子です。コンラはゲッシュによって名前を名乗るこはできません。そのこともあって、クーフーリンは息子をゲイボルグで殺してしまいました。
不幸が続いたクーフーリンにメイブは更なる卑劣な罠を仕掛けます。クーフーリンのゲッシュのひとつに{自分より身分の低いものからの食事は断らない}があります。このゲッシュを使いメイブは{犬の肉を食べない}のゲッシュを破らせました。災いによって半身が痺れた、クーフーリンはゲイボルグを奪われてしまい、奪われたゲイボルグで腹部を貫通された。こぼれ落ちた内蔵を腹におさめてでも、クーフーリンは戦うことをやめません。死期を悟ったクーフーリンは石柱に自分の体を縛りつけて、倒れることを良しとせずに絶命しました。
まとめ
クーフーリンは勇敢な戦士でした。しかも、ただの武勇に優れた戦士ではなく義侠心を持った、男が惚れる男だったと思います。
それにしてもジャンプ漫画みたいなストーリーだったと思いました。変身するしね。