ゲーテによって物語の主人公となった鉄腕のゲッツは若くして亡くなる英雄として語り継がれることになりますが、史実のゲッツは「決闘」を称して荒稼ぎをしていたことで、「盗賊騎士」と言われることになる。どうにも争い事を好むような血の気の多い性格だったと思われるゲッツは、身分に関係なしに喧嘩を売りまくったそうです。その姿は農民からしたら、権力に立ち向かう英雄に思えたことで民衆の英雄と名を残すことになった。今回は腕っぷしで名を広めたゲッツをご紹介していこうと思います。
若い頃
1480年に神聖ローマ帝国の下級帝国騎士の家に生まれる。本名はゴットフリート・フォン・ベルヒンゲン。あだ名はゲッツ。宗教改革などには無縁の田舎騎士だったとされ、戦争が起これば喜んで参加するような人物だったとされる。
14歳の頃に騎士コンラートの見習い騎士になるが、喧嘩ばかりで手に負えなかったので、塔に放り込まれたこともある。子供の頃からなかなかのヤンキーだったようだ。
二十歳頃にゲッツは老騎士の元で「フェーデ」を覚える。フェーデとは、貴族や騎士同士のトラブルを武力で解決する権利のことを指す。元々は自力救済を意味する言葉で、中世では自己の権利を侵害されたときに、自ら措置を講ずるものだった。具体的に何をするかと言うと決闘である。決まった時間と場所で、無関係の者が巻き込まれないようにしなければならなかった。
ところが、身代金や、掠奪を目的にフェーデを仕掛ける騎士が次第に多くなっていき、相手の関係者を誘拐したり、相手の領土を奪うとか過激なものになり、仕舞には何十、何百人で軍事組織を結成して大規模に荒らすしまわるようになり、規制されるようになっていた。そんなことお構いなしに、ゲッツは老騎士と「フェーデ」をやりまくり荒稼ぎをしてました。
義手となる
ゲッツは24歳の頃にドイツの南東で行われた戦争に参加した。この戦いで多額の報酬を得る活躍をしたが、代償も大きかった。味方の砲撃で右手を失ってしまったのだ。一説には剣に砲撃が当たり、弾みで右手首を切ってしまったとか。この事故でゲッツは義手をつけることになる。その義手は鉄製で剣も握れる高性なものであった。本来なら下級騎士であるゲッツが造らせることはできない。しかし「フェーデ」で荒稼ぎしていたゲッツは造らせることができた。実は後に義手はパワーアップを果たして、盾、手づなまで握れるようになる。大怪我をしたゲッツでしたが、義手のおかげで積極的に軍事生活を続けることが可能になった。それはフェーデでも生かされることになる。
フェーデをやりまくる
片腕が義手になってもゲッツは止まりません。義理の兄が射撃大会での好成績を残したのに賞金が貰えないことに激怒して、「フェーデ」を起こした。ゲッツもこれに参加することになる。町に住む一般市民を誘拐して、大司祭に多額の身代金の要求を続けたのだ。次に都市ミュルンへルクに「フェーデ」を起こした。騎士見習いの同期が監禁されていたことが理由だったのだが、既に同期は釈放されていた。同期本人も「過去のことである」とフェーデを起こすことには反対していのだが、金が目当てのゲッツには関係がありません。今回は流石に罪を問われて、アハト刑を宣告された。これによって財産の没収、法的な権利の剥奪を二回も言い渡されますが、ゲッツには関係がなく「フェーデ」を続けた。
それで、皇帝に言われてやっと止まったとか。とは言えそんなんで止まるわけでもなく、「畑を荒らされた」と大司教に「フェーデ」を起こして火事を起こした。その時に悪口を言われたゲッツは「俺の尻を舐めろ」と有名な言葉を残したらしい。
その後、これまでのフェーデで多額の財産を手に入れたゲッツは、騎士が衰退していく時代の下級騎士であったにも関わらすホルンベルク城手に入れたのだった。
農民によるクーデターに参加する
フェーデによって権力と戦う姿は、農民からしたら英雄にように思えたようで、農民側の隊長となって欲しいと依頼された。おそらく渋々だったようで、一ヶ月限定と言う条件付きで隊長をすることになる。農民による一揆は鎮圧されて、一ヶ月とは言え隊長をやっていたことでゲッツは責任を問われることになる。二年間の幽閉生活に、領土から出るな、馬に乗るな、などの10年間の軟禁生活を送ることになった。
だが、神聖ローマ帝国のカール5世はオスマン帝国との戦いにゲッツが必要であると、オファーしてきたのだ。ゲッツの名前は、時の権力者に求められるくらいに知名度があったようだ。これによって軟禁生活から開放されたゲッツは従軍することになるが、タイミングが合わず戦うことはなかったと言う。
1562年にゲッツは82歳でこの世を去った。生涯で二度の結婚をして7人の息子と3人の娘がいたそうだ。
さいごに
鉄腕のゲッツは漫画「ベルセルク」に登場するキャラクターのモデルだったりします。まあ、僕は全く知らないんですが。
ここまでご覧いただきありがとうございました。